連続的成長を土台に、非連続的成長へ挑む「M&A推進部門立ち上げ」へ

JA三井リース株式会社は、「Real Challenge, Real Change」をグループ経営理念とし、農林水産業の生産・流通・販売ネットワーク、金融ネットワーク、グローバルな事業ネットワークを有する総合リース業を展開されています。

案件概要

課題
  • ・新設されたM&A推進を担う事業開発部の体制強化
  • ・M&Aにおけるエグゼキューション能力の強化およびフレームワークの構築
  • ・(※エグゼキューション:戦略や計画を具体的に実行し、成果につなげる一連のプロセス)
実施サービス
  • ・インオーガニック戦略立案
  • ・現地常駐によるM&A推進体制構築支援
  • ・M&A対象領域をテーマとした主要事業部との検討会
  • ・M&A実務勉強会
効果
  • ・全社的な理解醸成および社員意識の変革
  • ・事業開発部メンバーのエグゼキューション能力の向上
JA三井リース株式会社
お話しを伺った方
JA三井リース株式会社 事業開発部長
安田 匡宏 様
JA三井ストラテジックパートナーズ株式会社(JA三井リースグループ)
代表取締役社長
滝田 尚吾 様
GWP
執行役員
長田 新太
フィナンシャルアドバイザリー部1部 ヴァイスプレジデント
岡 大樹
肩書・経歴はインタビュー時のものです。(以下敬称略)

ご担当者の声

依頼背景
中期経営計画達成に向けたインオーガニック戦略
長田

2023年頃からインオーガニック戦略について検討を進められてきたと伺っています。その背景についてお聞かせください。

滝田

2020年から2024年度の中期経営計画では、当期純利益300億円の達成が目標として掲げられていました。この目標の実現と次期中期経営計画を見据え、オーガニックな成長だけではなく、より飛躍的な成長を遂げる手段として、インオーガニック戦略(M&A)の実行が選択肢の一つとなりました。

安田

新たな資本提携戦略と収益拡大の実現を目指し、初期メンバー4名でインオーガニック戦略の推進を開始しました。この戦略を推進するにあたり、社内の知見だけでは十分ではなかったため、当社出身者1名と株主企業からの招聘メンバーに加え、外部プロフェッショナルとしてグローウィン・パートナーズ(以下、GWP)の岡さんにもご参画いただき、万全の体制を整えました。


(JA三井リース 安田氏)

第三者の専門家として、貴社内にインオーガニック戦略を軸とした「新たな風を吹き込む」ことをテーマに参画しました。
初期から携わった立場として振り返ると、戦略立案期には、経営層がインオーガニックな成長を飛躍的な成長手段として取り入れる意思決定を行い、それに伴って各事業部においても、インオーガニック成長を前提とした戦略検討が進められていきました。
具体的には、会社として不足している機能や強化すべき領域を整理し、買収対象とすべき領域を検討しました。これらは、経営陣と複数回にわたり議論を重ねた内容です。

当時、滝田様および安田様はそれぞれ今とは異なる事業部にご在籍でしたが、滝田様には検討会にご参画いただき、貴重なご意見を賜りましたことを記憶しています。

安田

当時は、M&Aの対象領域、すなわち当社にとって中核となり得る事業領域の検討を重ねていました。具体的には、不動産、BPO、メディカル、モビリティ×エネルギー、PCライフサイクルマネジメント領域が議題として挙がっていました。

滝田

意見交換の場でも、「どのようなパートナーと連携すれば何が実現できるのか」「10年後のJA三井リースグループが目指すべき姿とは」といった観点でディスカッションをリードされた岡さんの姿が印象に残っています。


(JA三井ストラテジックパートナーズ 滝田氏)

第三者の専門家として参画する意義は、M&Aを検討する上で必要な知見や判断軸を貴社内に浸透させることだと考えていました。その中で、オーガニック成長で成果を上げてこられた貴社が、インオーガニック戦略を取り入れ変革していくには、相当なパワーが必要であることも実感しました。

そのうえで、「社内」と「専門家」それぞれの視点を強く意識しながら提言を行ってきました。

滝田

私は当時、JA三井リース建物に所属しており、岡さんにはゼロからインオーガニック戦略立案に向けた問題意識の持ち方や分析手法など、具体的なプロセスや最適解についてレクチャーいただいたことが印象に残っています。経営陣との意見交換会にもご参加いただきましたね。

外の視点を取り込み、内から強くなるM&A組織
長田

2024年4月には事業開発室(M&Aを推進する部門)が部に昇格するとともに、人員も10名体制へ拡大し、本格的に始動されたと理解しています。当時の中期経営計画や2025年に開始する新たな中期経営計画を見据えたご判断だったのでしょうか。


(GWP 長田)

滝田

2025年から2027年度の中期経営計画「Sustainable Evolution 2028」では、「ビジネスモデルの進化」の具体策として「パートナーシップの強化」を掲げています。戦略的パートナーとの連携、つまりインオーガニック戦略も視野に入れた上で、社会課題の解決に取り組む方針を示しています。

安田

それまで他の部署から携わっていた滝田と私も、戦略遂行の一端を担うメンバーとなりました。外部プロフェッショナルを中心とした立ち上げ初期に続き、自社出身のメンバーの拡充が図られました。しかし、即戦力となる人材は依然として限られていました。

案件のソーシングが増加する一方で、社内リソースや専門知識が十分とは言えません。そのため、当社の内部事情を深く理解した専門家が必要でした。意思決定や業務推進におけるスピード感を重視し、常時相談できる体制が望ましいと考えていたため、常駐型でM&A体制構築に向けた支援を継続してGWPへ依頼しました。

滝田

自社の強みや文化を熟知した当社のメンバーと、外部のM&Aに特化したプロフェッショナルが混在する組織体制になったことで、M&Aに関する議論の場では、良い化学反応が生まれたと感じています。

支援効果
気づきを重ね、鮮明になっていくM&A像
長田

お二人を中心メンバーに据えて、当時の部内の状況をどのように捉えていますか。

安田

事業開発部内のコミュニケーションが格段に活発になったと実感しています。岡さんをはじめとする専門家と積極的に議論を重ねる中で、「自社らしさ」や「強みを活かす」という視点も加わり、経営層への提案機会も大きく増加しました。

役職や立場によって理想とするM&A像は異なり、また外部環境の変化により目指す目標自体が変わることもあります。その過程で、意見のぶつかり合いが生じることもあります。アドバイザーとして議論を活性化させることはもちろん、組織づくりにも関与することを意識し、日常的なコミュニケーションも大切にしていました。

(GWP 岡)

長田

インオーガニックな成長を実現していく過程では、意見の相違や、思うように進捗しない場面もあったと存じます。特に、貴社のように確固たる企業文化と豊富な経験を持つ組織においては、インオーガニックな成長を検討していくこと自体が、単にM&Aをトップダウンで進めるオーナー企業とは異なる難しさが伴ったものと推察いたします。

滝田

そうですね、困難な時期も共に歩んでいただけたことは、GWPへの信頼につながりました。専門家の存在は必要不可欠ですが、単なる外部意見の受け入れだけでは十分とは言えません。対話を通じて良いM&A像を磨きあげています。

常駐いただくことにより、内部事情を十分に踏まえた助言をいただけた点は非常に有益でした。時には厳しいご指摘もありましたが、その積極的なご関与が実際の成果を導いたと考えています。

中長期視点からのシナジー発揮か、短期視点からの利益重視か
長田

ここまでの取り組みの中で、最もご苦労された点についてお聞かせください。

安田

最大の課題は、M&Aを通じたシナジー創出に関するバランスの取り方です。従来は漸進的な利益成長を志向していましたが、インオーガニック戦略下では革新的な成長視点が不可欠となりました。一方でシナジーの追求が過度になると、検討・実現の難易度が上昇するため、その両立には苦心しています。GWPにも「シナジーの追求レベル」について助言をいただきました。

長田

中長期的に見ればシナジー効果の最大化が理想です。しかし短期的な成果に着目すると必ずしもプラスに働くとは限りません。我々も常に両側面のバランスを並行して検証する難しさを感じています。

安田

前年度は中期経営計画上の純利益目標を大きく上回る成果を達成できました。そのため、投資に対する柔軟性が持てる環境にあります。今後は更に、中長期視点を持って取り組んでいけると考えています。


(JA三井リース 安田氏)

滝田

もう一つの重要なテーマは、社内意識の醸成です。資本提携戦略を成長の一手と捉える社員が現れる一方で、その難しさにためらいを感じる社員もいます。そこで実績を積み重ねながら意識変容を促していくことを重視しています。

成功事例を示すことは、経営層の納得にもつながるでしょう。それにより、案件の実現スピードの加速にもつながります。そういう意味で、2025年の物流向けロボットサービスプロバイダー企業とJA三井ストラテジックパートナーズの資本提携は好事例の一つだと捉えています。

滝田

すべてが初めての経験で、多くの学びがありました。デューデリジェンスからバリュエーション、リーガルチェックまで一貫してGWPにご支援いただきました。こうした知見をマニュアルとして整理し、次の案件に活かしていきたいと考えています。

社員の皆様にも徐々に変化の兆しが見られているのではないでしょうか。潜在的に意欲ある社員の方が多くいることを実感しています。

安田

昨年度の社内公募では、事業開発部への応募が多く集まりました。特に若手社員には「挑戦できる会社」であることを実感して欲しいと強く願っています。

滝田

GWPの皆様によるロジカルな思考とアグレッシブな行動が、多くの社員に刺激を与え、新しい風を吹き込んでくださいました。 


(JA三井ストラテジックパートナーズ 滝田氏)

今後の展望
「Real Challenge, Real Change」を体現する次のステージへ
長田

今後の目標についてお聞かせいただけますでしょうか。

滝田

今後はPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)にも力を入れていきたいと考えています。資本業務提携先とビジネスを共創し、社会課題の解決に挑戦していく体制を目指したいです。外部からご紹介いただく案件も、この方向性と合致するものが増えてきており、好機と捉えています。

安田

「リース会社」と一口に言っても経営方針や社風は多様です。金融分野に特化する企業もあれば、当社のように顧客事業へ深く関与する方針の会社もあります。「リースを中心とした金融ビジネスと、他業種が一緒になることによるシナジー」の可能性を模索していきたいですね。

また、M&Aのみならず、各プロセスの解像度を高め、次のステップへ繋げていく意識は社員に確実に広がっています。インオーガニック戦略を取り入れたことによって、経営理念である「Real Challenge, Real Change」の実現にむけた思考や手法が、社員一人ひとりにおいて深化してきたと感じます。

長田

最後に、これからインオーガニック戦略を検討される企業様へのメッセージをお願いいたします。

安田

事業推進の前提として、経営層の強力なリーダーシップが不可欠です。加えて、現場を深く理解した自社出身の人材と、GWPのようなプロフェッショナルが協働できる組織体制が求められると考えます。

インオーガニック戦略は社内でも特異な部署となるため、実行には相当な労力が必要です。特に立ち上げフェーズでは、必要に応じて外部のプロフェッショナルをうまく活用し、早期に必要な知見や情報を獲得するとともに、社内外含め密度の濃いコミュニケーションを積み重ねることが突破口になります。

滝田

加えて早期の成功体験による達成感も重要なポイントと考えます。成果が見えにくければ、現場の士気も高まりません。短期間で成果を創出するための戦略策定が肝要であると感じます。そのためにも、プロフェッショナルと企業が一体となって推進していける体制が最初の一歩として必要不可欠だと実感しています。